「布引公園の災害史を歩く」を歩いてみて

 午後からは2班に分かれて実地の山歩きです。A班は松岡&觜本先生の先導で、B班は太田&小森先生の先導でスタートです。まずは関係者以外立ち入り禁止の扉をあけて、③の世継山へ。午前のプチトリビア「明治天皇に世継ぎの殿下(後の大正天皇)がお生まれになった事を記念して改名した山」です。いいお天気で眺めが良く神戸の市街地や海が見えます。そして西向かいの山に崩落も見えます。昨年夏の大雨で崩れた場所で、トウェンティクロスがこれにより現在も一部通行禁止とのこと。ほんの数か月前から今に至る災害跡地です。

 次に細い山道を通って①へ。このルートは足場が悪く、スタッフが張ったロープが大活躍しました。①はまさに水害の崩落スタート地点です。水害後に作られた堰堤(えんてい)を見ていると午前に学んだ「崩落の横幅は約26m」より大きく感じられます。その大きさで丸ごと地面が流れ落ちてくる。上にある木も岩も一緒に。それはまさに山津波。今は土石流と言いますが、当時言われていた山津波の方が、この怖さを表しているような気がしてなりません。

 ②にはゴルフネットを張るためのポールが1本傾いて立っていました。当時のものだそうです。ただネットをしていても谷に落ちたのでは…。なにせこのゴルフコース、崖越えや坂道のロングコースと、ロストボール必死なコースが山盛りで、なぜここに作ろうと思われたのでしょう。謎です。

 その後、ハイキングコースに入り各段に足場が良くなりながら、過去と現在が交錯する道を歩いていきました。④にはかつて(どの時期かは不明)の山津波の欠片と思しき岩がごろごろ。丸より四角、立方体が多いのは六甲山の土の特徴なのでしょう。歩き進めると横の山肌がまさに真砂土。コンコンとノックしたら崩れそうなのが、素人目にもわかります。木の根で崩れ落ちるのがぎりぎり止まっているという。ちなみに下見の時に觜本先生が金槌で軽く叩いて、どれだけもろいか実演してくださいました。

 「この樹はヤシャブシです。当時は植林にちょうど良いとよく植えられました。今はアレルギーの関係であまり植えられていません」「これは山桜ですね。明治に植えられたものです」先導の方々もそうですが、参加者も色々な興味と知識をお持ちの方が多く「これ何やろう?」と誰かがつぶやくと、誰かが答えてくれる。「この赤い実は食べられると聞きましたよ。すっぱいらしいですけど」「食べるもんちゃうで」「あの黒い実は?」「あれは食べられないね。あれは染色用」「え、染めたら何色に?」「萌黄色やね」などなど。どうしても縦長の列になってしまうので、前と後ろで話題が違うのも面白かったです。ラストでA班とB班が合流。前では「あの辺りが分水箇所です」とブラタモリの世界が始まりかけているのに、後ろでは「あの対岸にいるのはオシドリですね。オシドリはカモ科の鳥です」という解説&激写が。あの距離で鳥の判別ができるのが私には不思議でした。不思議といえば、⑨の断層の隣の神社。『ご利益があります。参拝しましょう』という文言の看板を見たのは初めてです。にもかかわらずご祭神の名前は書かれていない。どなたかご存知の方がおられましたら教えてください。

 その⑨の断層ですが、写真のとおりくっきりと。これほどわかりやすい断層の例は珍しいそうです。180度振り返ると谷が。この谷はずっと続いており、つまり断層もずっと続いているということ。この意味を…たまには考えたほうがいいかもしれません。

 今回は、過去の災害(①が始まりで⑦が終着点です)と、堰堤というその対策の実物と、かつてのゴルフコースと、様々なプチトリビアが入り混じった山歩きでした。皆様も印刷した地図を片手にハイキングコース(④~⑩)を歩かれてみてはどうでしょうか。予想もしなかったものが見えてくるかもしれません。

各番号の位置は下記をご覧ください
http://k-tec117.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/nunobki-coursemap-A3.pdf

また,この日の報告は下記をご覧ください
http://k-tec117.sakura.ne.jp/wp/?p=774

K-TEC会員 曽谷 はなこ


コメント

「布引公園の災害史を歩く」を歩いてみて — 1件のコメント

  1. 臨場感があってなかなかいいですね。列の中間で前後の伝達役を果たしてくださった筆者の姿が目に浮かびます。
    オシドリのところは、当事者の一人として吹き出してしまいました。「オシドリは毎年相手を替えるらしい」の件は、あえて避けられたのでしょうか?これも私にとって、当日の忘れられないプチトリビアでした^^

橋田之宏 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です